【原稿公開】第5章(3)最後は志望大学の過去問題が最も大事




 

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ここで少し別の角度から応用力について考えたいと思います。

応用力は基礎力とは異なる一面を持っています。それは限界値がないことです。基礎力は教科書の範囲内という大まかな枠が存在します。従って「基礎

力がついた」という基準が明確です。しかし応用力にはそうした基準がありません。厳密にいえば学生時に学ぶ範囲は存在します。ただ、明確な制限はなく限界は基本ありません。つまり応用力は伸ばそうと思えばいくらでも伸ばすことができます。

ただし、それは「無限に時間と労力があれば」という条件付きの話です。学生の皆さんは学生生活の全てを勉強に捧げているわけではありません。部活もやっていますし、もちろん友達との時間も大切です。自分の趣味に使う時間も必要です。学生の皆さんにとって勉強以外の時間は特別です。学ぶことは勉強だけではないのですから。従って、ある程度枠を決め目標値を設定し、基礎力から目標値までを応用力と定義して勉強することをお勧めします。

 

 

ではそもそも応用力をつける目的はなんでしょうか。模擬試験で点をとるためでしょうか。偏差値をあげるためでしょうか。おそらく多くの人は志望校に合格するためかと思います。そして合格するためには、志望校の入試問題が解けなければなりません。そうすると、目指すべき応用力は志望校の入試問題のレベルを元に設定することになります。

模擬試験の点や偏差値ではないのです。もちろんこれらの指標も、ある程度のレベルまでは参考になります。しかし志望校合格という目標を掲げるのであれば、いずれ通用しなくなります。なぜなら、模擬試験はあくまで一般的に学ぶ内容を応用問題として出題し、全国の学生を一律の基準で評価するためのものに過ぎないからです。大学合格の可否を評価するためのテストではないのです。ある人は模擬試験レベルまで勉強しなくても合格できる大学を目指しているかもしれませんし、ある人は模擬試験レベルでは全く歯が立たない難関大学を目指しているかもしれません。

また偏差値は特定の集団の中での位置付けを表しています。もし特定集団が全員同じ大学を志望しているのならば偏差値は参考になりますが、全国の学生が同じ大学を志望することはおそらくないでしょう。ということは、実際に戦うライバルが少ない集団をもとに計算される偏差値にはどれほどの価値があるのでしょうか。ほとんどありません。

 

 

では目指す目標値(応用力)は単純に志望校の入試問題レベルに設定したらよいのでしょうか。確かに大雑把に設定する目標としては問題ないです。しかし、より厳密にいうならば入試問題レベルではなく、「志望校の入試問題で合格ラインに達する力」が正しい目標値です。なぜなら入試問題には様々なタイプのものがあるので、目指す目標値はレベルだけでなく他の要素も含めて設定する必要があるからです。

 

 

例えば難易度について考えてみましょう。ある大学の入試問題は一問が難しく、いかに解いて点を稼ぐかが合格の鍵です。一方、別の大学の入試問題では易しい問題が多く出題され、いかにミスせず早く確実に解けるかが勝負となります。これらは全く異なる入試問題です。ところがなんと、二つの大学の偏差値は同じなのです。このことからも偏差値は実力や問題の難易度ではなく特定集団の中で相対的な指標であることが分かります。前者では難しい問題を解く力が必要です。後者は難易度の高い問題を解く力よりも、易しい問題を早く確実に解く力が必要です。即ち、それぞれ合格するために必要とされる応用力は全く異なるのです。

 

 

問題形式も大学によって異なります。早稲田大学の英語長文は非常に長いと有名です。従って時間内に解くためにも長文の読解力は一般の国公立大学よりも高いレベルを要し、速読力も必要となるでしょう。また京都大学の数学はたった一、二行で構成された問題を出されることがあります。となると京都大学合格を目標にするならば、シンプルで情報量の少ない問題を解釈し解答する力が応用力として必要になります。私立大学にはセンター試験のようにマーク式テストを課す大学もあります。私はセンター試験が苦手なので、この大学を目標にしていたとしたら、応用力はかなり乏しかったことになります。

 

 

また本屋に行くと医学部受験用の問題集もよく見かけます。専門用語を扱っている医学部受験専用の単語帳まであります。こうした題名の教材をみると「医学部合格のためには、このレベルの問題が解ける必要があるんだ」と思ってしまいます。しかし実際は必要ありません。特に国公立大学の医学部受験にはほとんど役に立ちません。なぜなら、国公立大学は医学部も他学部も同じ入試問題を解く場合が多いからです。従って、医学部受験用に作られた専門的で難易度の高い教材の出番はほとんどありません。本当に必要になるとしたら極一部の医科単科大学と極一部の私立大学医学部です。これも志望校の入試問題から応用力の目標値を設定しなければ、手を出してしまいがちな教材です。

 

 

 

もうひとつご紹介します。志望大学に合格するのであれば、その大学の入試問題を全て解く必要はないという事実です。実際、東京大学の数学はまずどの問題を捨てるか吟味します。そして解ける問題を確実に解いていくことを戦略とし合格ラインを狙います。捨てる問題はもちろん難易度の高い問題です。従って東京大学の入試問題を全て解けるレベルに達さずとも合格はできるのです。これは東京大学に限ったことではなく、ほとんどの大学に当てはまります。志望大学に合格するためには合格ラインを超えれば良く、全て解ける必要はありません。となると、目指すべき目標値は志望校の入試問題レベルではありません。厳密にいうと、合格ラインを到達するレベルです。だからこそ、早くに志望校の過去問題を分析し、合格ラインを見極め、応用力の目標値を設定する必要があるのです。でないと、どこまで応用力をつければいいか分からず、時間と労力をかけすぎて、必要以上に勉強してしまうことになります。すべてこなせるなら、まだよいですが、結局中途半端な勉強になってしまっては本末転倒です。

 

 

こうして志望校の入試問題から逆算し応用力を定義できれば、おのずと勉強しなければならない問題集も決まります。最低限、応用型問題集が満たしていなければならない条件はこれまで話した通りですが、その条件をクリアしたらあとは、自分が目指す応用力に応じて選ぶだけです。

応用力は無限につけることができます。だからこそ早めに、目標値を設定し応用力を育てていきましょう。そうすればきっと結果につながる力を身につけることができます。

 

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