【記憶①】記憶の倉庫?貯蔵庫モデルとは




こんにちは。勉強方法を教える精神科医ペンペン先生です。前回お話した通り、早速人間の学習を紐解いていこうと思います。

 

「学び」は6つの要素から構成される

まず人の学習において本質的な要素は何があるのか、考えてみます。「学び」と聞くと多くの人は学生時代の勉強をイメージされるかと思います。さて、思い出してみましょう。勉強はだいたい以下のような流れのサイクルでしたね。

 

 

学校で授業を受けたら、宿題などで問題を解きます。定期テストが近づくと、テスト前勉強を行い、テストを受けます。テスト後は復習しますね。そしてまた学校の授業を受け…。どうでしょう。思い出しましたか。これが勉強の流れの一例です。では、それぞれの学習段階をもう少し一般化して、結局何をしているのか明確にしてみましょう。すると以下のようになります。

 

 

学校の授業では、概念を主に学びます。例えば数学だと、二次関数とは何か、確率とは何か、ですね。次に概念を理解した上で問題を学ぶわけです。そしてテスト前になれば、それまでに学んだ内容を復習して、テストに望みます。アウトプットです。テスト後は、もちろん復習です。このように、一連の学習の流れは抽象化すると「概念を学ぶ」「問題を学ぶ」「復習」「アウトプット」の4段階で構成されていることがわかります。

 

 

この4つの学習段階で必要となる学習要素を抽出すると、人間の学習メカニズムが見えてきます。人の「学び」が成立するためには、情報把握、情報処理、記憶、理解、問題解決、想起の6つの要素が不可欠なのです。

 

 

つまり、この6つの要素について心理学や脳科学で説明できれば、人間の学び自体が明らかになり、どんな勉強方法が人間という動物に合うかもわかるようになるのです。

 

 

情報把握
絵や文章などの情報を取り込む
情報処理
把握した情報を記憶しやすい形に変換する
記憶
情報を脳に保持する
理解
情報同士の整合性をとる。全ての学習段階の質を上げる
問題解決
目の前にある問題を解決する
想起
脳に保持した情報を取り出す

 

実は、心理学・脳科学の両方で説明できるのは、今のところ③の記憶くらいで、その他は心理学(認知心理学)で説明することが多いです。ちなみに「①情報把握→②情報処理→③記憶」は一連の流れになっており、セットで理解したほうがよいでしょう。

さて、いよいよ具体的な話にはいっていきますが、最初はみなさんに親しみのあるテーマ、③記憶から見ていこうと思います。

 

 

 

心理学からみる記憶の流れ

はじめに、人が新しい情報を把握してから記憶するまでの全体の流れを見てみましょう。

 

 

どうでしょう。よく分からない単語がたくさん並んでいますね。一つ一つが非常に大切な役割を担い、全体を構成しています。なので、それぞれの概念をきちんと説明する必要があります。嫌にならずに、ぜひお付き合いくださいね。まずは、貯蔵庫モデルからぼちぼちやっていきましょう。

 

 

 

記憶の倉庫?貯蔵庫モデルとリハーサル

貯蔵庫モデルは人間の記憶システムを、簡単に描いたものです。「脳の中には情報を保持する記憶倉庫が2種類あって、情報は記憶倉庫を行ったり来たりするんだよ」と説明した記憶モデルです。

 

 

めちゃくちゃ簡単ですよね。人間の記憶ってこんな感じなの?と驚くかもしれませんが、こんな感じらしいです。みなさんもご存知かと思いますが。記憶は大まかに短期記憶と長期記憶に分けることができます(実際はもっと細かく分かれますが、本記事ではまず二つに分けます)。

短期記憶(情報)はまさに今、頭の中の意識下にある記憶(情報)です。一方、長期記憶(情報)は一度意識下から消えても、再び思い出すことができる記憶(情報)です。情報はまず短期記憶に入ります。しかし、短期記憶は、情報を約20秒程度しか保存できません。したがって何もしなければ、すぐに消えてしまいます。なお消えた情報は長期記憶には移行していないので、思い出すこともできません。

 

 

また、短期記憶に保持できる情報量も決まっています。これを「メモリースパン」と言い、最大量は約7つ前後とされています。短期記憶ではたった7つしか覚えることができないのです。どんなに天才でも、です。つまり、人間は一度にたくさんの情報を短期記憶(意識下)に保持することはできないんですね。

このように、人間とはすぐ忘れてしまう生き物なのですが、大事な情報をあまりにも次から次へと忘れてしまっていては、生きていくのに困りますよね。そこで人間の脳は忘れることを防ぐために「リハーサル」という行為を行います。ライブのリハーサルと同じように、保持したい情報を頭の中で繰り返す(反芻する)のです。

例えば、デートのためにレストランのお店を予約するとします。ネットや本で良いお店を見つけて、予約用の電話番号を見つけました。050-・・・です。電話アプリを開き、電話番号を入力します。ただ、入力するまでに番号を忘れたらアウトなので、頭の中で何度も繰り返すことで、一時的に記憶を保持し、番号を入力しますよね。

 

 

これが「リハーサル」です。「リハーサル」することで、短期記憶はより長く保持されます。でも電話をかけたら、すぐに電話番号を忘れてしまいます。なぜなら、電話番号は長期記憶へ移行されなかったからです。

さて、とても美味しいお店だったので、もっと行きたいと思い、毎日電話し予約をとりました(マジか)。するとどうでしょう。毎日リハーサルすることになるので、そのうち脳が「あ!これは大事な情報なんだな」と勘違いして長期記憶へと移行します。こうして、晴れて美味しいレストランの電話番号は長期記憶へと保持されることになるのです。

すなわちリハーサルは二つの役割があると言えます。

①短期記憶での一時的な保持力の拡張
②短期記憶から長期記憶への移行

さらに、これら機能の違いにより①維持リハーサル②精緻化リハーサルと名前がついています。音楽ライブだけでなく、記憶にもリハーサルって大事なんですね。

 

 

維持リハーサルと精緻化リハーサル

さて、もう少し話を深めていきましょう。実は、どの電話番号でも繰り返せば長期記憶に移行するかというと、そうではありません。今回は「気に入ったレストランの電話番号」だったから、精緻化リハーサルが行われ、長期記憶に移行できたのです。もし興味のない宛先の電話番号であれば、たとえ毎日同じ番号をかけ続けたとしても、なかなか長期記憶には残りません。

「あー・・・なんど見ても忘れるんだよね〜」と1年くらい言い続けた経験ってありませんか。

好きな人の名前は一瞬で覚えるけど、特に興味ない人の名前は何度見ても覚えられないのと同じですね(ほんとか?)。

なぜこんなことが起きるのでしょう。それは情報の質によって行われるリハーサルが異なるからです。つまり短期記憶で終わる維持リハーサルが行われるのか、長期記憶に移行する精緻化リハーサルが行われるかは対象となる情報の質によって変わるのです。

 

 

維持リハーサルは、無意味な情報を繰り返す作業です。厳密に言うと電話番号は「050-○○○-○○○」というように、番号がグループ分けされていたり(まとまりを作る=チャンク化)、美味しいレストランという個人的に重要度の高い情報であることから、純粋な維持リハーサルとは言えないのですが。いずれにせよ、羅列された数字など、意味をもたない情報を単に繰り返すことは維持リハーサルになり長期記憶に残りにくいのです。

一方、精緻化リハーサルは、意味づけされた情報に対し行われるリハーサルです。情報に意味付けることを有意味化と言います。実は、有意味化された情報でなければ精緻化リハーサルは行われません。すなわち、有意味化された情報でないと、長期記憶に移行することはできないのです。なので、電話番号を長期記憶として保持するためには、電話番号に対し何らかの意味づけをしなければなりません。

もともと意味を持たない番号の羅列(電話番号)に対し、リズムや語呂合わせなど、その人にとって意味のある番号に変化させることができれば、精緻化リハーサルが行われ長期記憶への移行が可能となります。

長期記憶に保持したければ、情報の有意味化が不可欠なのです。

 

 

こんな話があります。大学生へ、つまらない科目について聞いてみると、理系の学生は「社会科は暗記することが多くてつまらない」と答えます。一方、文系の学生は「数学は覚えることが多くてつまらない」と答えるそうです。それぞれの回答から「暗記が多いイメージの科目はつまらないと感じやすい」ことがわかります。

ただ互いに相反な意見であるため、数学や社会が絶対的に暗記の多い科目というよりも、単に暗記のイメージが強いだけのようです。では、なぜ暗記のイメージが強くなるのでしょうか。

それは、少し苦手意識のある科目だと、理解が不十分で、内容に意味付けできていないのにも関わらず、無理やり頭に残そうと強制的に維持リハーサルを行なってしまうからです。しかしどれだけ頑張っても、維持リハーサルなので、すぐに忘れてしまいます。そしてまた強制的に記憶しようと躍起になり、つまらないと感じてしまうのです。

一方得意な科目は、十分に理解できることが多く、それだけで学習内容は有意味化されます。すると精緻化リハーサルが自然と行われ、長期記憶に残りやすくなります。長期記憶に情報が保持されれば、それを活用して問題を解いたり、新しい内容を理解するなど、勉強がよりスムーズになるので、面白みを感じるのです。

こうした理由から、理系学生や文系学生は、苦手意識を感じている科目に対し暗記が多くてつまらないと感じていたわけです。つまり、維持リハーサルで記憶しようとすると、苦手意識が強化されるリスクがあり、精緻化リハーサルで記憶すれば、面白さを感じやすく苦手にもなりにくいのです。

 

 

「覚える・記憶する」のは、やり方一つで得意のタネにも苦手のタネにもなります。だからこそ学習で精緻化リハーサルを行うためにも勉強内容を理解し、意味づけることが重要なのです。

はい。では今日はここまで。まとめです。

・人間の(心理学的)記憶システムは貯蔵庫モデルが提唱されている
・貯蔵庫モデルは「短期記憶→リハーサル→長期記憶」
・リハーサルは短期記憶の保持力の拡張と、長期記憶への移行の役割がある
・リハーサルは維持リハーサルと精緻化リハーサルがある
・維持リハーサルは無意味な情報を繰り返すだけ→長期記憶へは行かない
・精緻化リハーサルは情報に何らかの意味を持たせる→長期記憶へ移行する

 

心理学から見た記憶のメカニズムは大雑把にこのような感じです。これだけでも世にある多くの暗記法が良いとされる根拠を説明できます。すごいですね。

さて、暗記には精緻化リハーサルが有効であり、精緻化リハーサルを行うためには記憶する情報を有意味化しなければならないことが分かりました。では、情報をどのように有意味化していけばよいのでしょう。そこで次回は「記憶しやすい情報処理について」お話したいと思います。

 

 

前回の投稿の付け加え

少し付け足します。

当然ですが人間というシステムを明らかにする研究は日進月歩です。まだ分かっていないこともたくさんあります。ただ多くの研究者の努力により、少しずつですが明らかになってきているのも事実です。

今回、そうした先生方の知恵をお借りし、私たちの普段の学習を少しでも行いやすい形に変えることを目標としています。従ってペンペン先生自身の考察もかなり含まれることになります。もしかしたら学問的にずれている点もあるかもしれません。

ただ、最終目標は「全ての人が勉強方法を確立し今の学習に変化を与えること」なので、ぜひ寛容な目で見守って頂ければ幸いです。(なお学問的に誤っている場合がありましたらぜひご指導頂けると嬉しいです)。

では🐧










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